あんなこと こんなこと(164)

 秋の果物の季節になってきた。スーパーの店先にもそうした果物が目に
付くようなった。果物と言えば戦争中の事を思い出す。
 疎開先で食べるものがなけなり、ひもじい思いをしている時に、本来なら
栗拾いをしたかったのだが、そこの庭にはどんぐりしかなかったので、
管理人のおじさんに睨まれながらこっそりどんぐりを腹の足しに食べたいた
ことがったが、これを食べると腹を壊すのだ。ものすごい下痢になるのだが
おやつもなく、ひもじさに耐えられず、毎日食べていたが、どうにも下痢が
止まらないので、これには当時カンユウと言うクスリがきくと言うことで
どんぐりを食べてはカンユウを飲むという生活が続いていた。
 何故続投いたかと言うと、実はこのカンユウと言うクスリは大変
甘いクスリで、当時甘いものに餓えていた私たちにとって、どんぐりは
多少とも腹こしらえになるのでやめられず、カンユウは甘いものの
代わりになると言う具合で、腹に悪いことはわかっていたがそんな
生活をしていた。当時は果物なんて口にすることなんて全くなかった
時代だ。