ラジオ村・村長の旅日記(022)

 昭和34年の台湾出張でホテルの食事を食べた時の事だ。「食後の
デザートは何になさいますか?」ときくかれたので、台湾に来てバナナを
食べないでどうする?と思っていたので、と言うのも、当時はまだ
バナナは日本では高級食べ物で、簡単には口にできなかったから、
この際、たっぷり食べようと思いボーイさんにそう伝えたら、
なんとそのボーイさんは不思議そうな顔をして本当にバナナで
いいんですか?と言う顔つきなのだ。「バナナでいいから・・・」
と言ったら驚いたことに果物皿に大きなひと房のバナナが現れた
のだ。「こんなには食べられません」と言うと「残ったら部屋へ
お持ち帰りください」と言うではないか!
 何でこんなに下さるんですか?」と問うたら「他の果物との
釣り合いを考えるとこんな具合になるんです。それに定食の
デザートでバナナを頼まれた方は初めてなので・・・」と。
台湾ではバナナはごく庶民的な食べ物で安く売っている果物で、
メロン、イチゴなどと言うとちょこっと皿の盛られて出てくるが
それらの値段と比べるとどうしても山盛りになるようだ。
 そんなわけでこのホテルに二晩泊まったのだが、朝食の
デザートは黙っていてもボーイさんが毎回山のように盛り上がって
いるひと房のバナナが出てきた。あちらは親切心でやっているので、
それを部屋に持ち帰りせっせと食べざるを得なかった。