ヨーロッパ珍道中に始まりだが、ことばも全く道じない中での生活が
始まった。第一日めの朝、ペンションは朝食が付いているというので
とにかく腹がすいていたので、何処で食べるのかと思いドアーを
開けて外の出ようとしたら、なんとドアーのそとにお皿にコーヒーと
クロワッサンのパンが一つ乗っているだけ、しかもすでにコーヒーは
さめているではないか!
ユーロッピアンモーニングと言うのがこう言うものだと言うことは
知らなかったので驚いた。とてもではないが足りない。とにかく
仕方ないのでそれをつまみ、外出し近くのパン屋へ飛び込み菓子パン
の如きものを買って帰ると言うはめになった。
ここのペンションはこじんまりした5階建てのペンションで
ほとんど老夫婦二人で運営し、掃除には黒人の女性がやって来る
と言う感じのところだったが、とにかくフランス語が通じないから
たいへんだ。身振り手ぶりでの会話しか出来ない。
次ぎの日、絵を描いて、地図を見せて、バスの絵などを添えて
「ここへ行くには?」と質問し、そんなこんなでとにかく
ヨーロッパ視察旅行が始まったのだ。あまりにもペンションの
おばさんに時間を取らせたので気の毒に思い、帰りにおみやげに
菓子を持って帰ったら、次ぎの日の朝の事、ドアーをトントンと
誰かが叩くではないか!知った人がいるわけがないので誰かと
思いドアーの覗き窓から見るとなんとペンションのおばさんが
コーヒーを持って立っているではないか!
昨日のお菓子がきいたらしい。あつあつのコーヒーを持って
きてくれたのだ。パンはあいかわらずクロワッサン一個だけ、
しかし熱いコーヒーはありがたかった。つまり、ここでは
チップがものを言うのだ。それがわかって、毎日くやしいかな
わずかな予算の中からチップを捻出することにした。