ラジオ村・村長の旅歴史日記(092)

 昭和48年10月、毎日映画社の依頼で引き受けて
いる「いでゆアラカルト」と言う温泉巡りの旅番組の
撮影で伊豆長岡へ出掛けた。
   伊豆と言えば温泉の宝庫で、ちょっと歩けば
いくらでも温泉があるという所だが、下加茂にある
大衆温泉は近所の人が利用する温泉で旅行客はめったに
来ないと言うものだったが、木造の50畳敷きくらいの
だだっ広い温泉で、入り口を入ると下に降りる
階段があり、三段くらい降りるとゲタ箱と脱衣籠が
用意してあるだけという庶民的な温泉で、都会では
入る機会がないだろうと、ここを撮影することにして
我我も体験したいと思ったので、旅館の食事を
済ませてから、夜8時ころだったろうか出掛けて
みた。カメラマンと二人でのんびり入っていると
ガラガラっとドアーを開けて、女学生らしい
二人連れの女の子が入ってくるではないか!
私たちがいるのがわかっているのに堂々と裸に
なって温泉に入ってくるのだ。
 考えてみれば入り口に男女の別はなく、女性が
入ってわるいことはないのだが、あまりにも若い子が
入ってきたので私たちはあわてた。彼らはそんな事に
おかまいなし、「今晩は・・・」と言うではないか。
我我が入っているのを知って入っているのだ。
その声に返事をしたかどうかも覚えていない。
とにかく上がるに上がれず、そんな事におかまいなく
平気で体を洗うしどうにもならない、とにかく
彼らが出るまで湯船の中でじっとしていた。
たまたまぬるいお湯だったからいいが、これが
熱い湯だったら多分倒れていただろう。