ラジオ村・村長の旅日記(047)

 昭和41年のヨーロッパ珍道中の旅だが、パリからリヨンに向かう
列車の中は夏休みの時期でもあったので、若者で賑わっていた。
そんな彼らと一緒に窓から外を眺めていた時だ(勿論窓は開けっぱなし)
雨も降っていないのに顔に何かしずくのようなものが飛んでくるよう
なのだ。なんとなく顔が湿るのだ。おかしいなと思いながらも
そのままで外を眺めていたのだがハンカチで顔をぬぐわねば
ならないほど濡れてきた。   
 よくよく考えたら、その当時はフランスと言えども列車の
トイレは垂れ流しだったのだ。そのしぶきが飛んできていた
らしいのだが、当然のことながら、列車を降りてかなり経つ
まで気が付かなかった。風呂に入るまでそんな事は思いも
しなかった。
 さて、そのリヨンの町だが、こじんまりとしたきれいな町
だった。真っ赤な赤い屋根の家が町全体を覆っていていかにも
フランスの田舎町(と言ってもフランス第二の都市だが)と
言う風情があり落ちついた町だ。丘の上の教会にケーブルカーで
登ると町全体が見下ろせて、ローヌ川沿いにはポプラ並木が覆い、
びっしりと家並みが続く。
 その川沿いに朝市が立つのだが、なんとそこで東北出身の
元学校の先生夫婦に会った。話を聞くと、定年退職してぶらぶら
ヨーロッパ旅行を楽しんでいるうちにリヨンが気にいって
一週間くらいペンションに滞在して暮らしていると言うでは
ないか!  なんと東北弁なまりのフランス語で堂々と会話を
楽しんでいるのだ。こんな生活もあるのだとその時始めて
知った。